プレス金型用CAD/CAMシステム

株式会社 ワイジェーエス
代表取締役 吉 田 三 郎

は じ め に

 昨今、金型メーカにおいてCAD/CAMシステムは、生産におけるITの活用体系の中で中枢となる設備としてリンクされており、国境を越えたグローバルな環境下で、短いサイクルに追従できる設計製作のスピード化への要求に対応している。

 CAD/CAMシステムは、ハイテクNCマシンの性能を最大限活用して、高効率かつ高精度・高品質な製作技術を支え、情報武装した新しい独創的な金型生産システムを形成する重要な設備となっている。


1:CAD/CAMシステム

 プレス金型用のCAD/CAMシステムは、プレス金型の設計に特化したCADと、WEDMおよびMC用CAMで構成されている。

 金型の設計処理と加工のためのNCデータ編集処理の間では、一元化されたデータを基にしており、設計と加工データ編集に対して重複した作業をすることなく、CADからダイレクトにCAM処理、すなわちNCデータの出力へ移行することが可能である。

 最近は、受発注メーカなどとの業務連携の過程で、情報の共有化と作業の合理化を図るため、互換データを確保するため、DXFファイルなど互換性のある形でデータのやり取りを行うことが多い。CAD+CAMとしての利用形態に対しては、DXF/IGESフォーマットデータの変換コンバート機能を装備し、操作体系は、シンプルでありながら多彩な処理能力により、設計からNCデータ出力に至るまで、効率的で無駄のないデータ活用と展開に重点をおいたシステムとして位置づけられている。

 金型の設計から製作までの一貫化により、自社の設計や加工に関する技術Know-How資産を生かし、データ管理の効率化、高効率なNCマシンの活用が図られることとなる。


2:ネットワークの構築

 金型メーカでは情報のネットワーク構築を図られている場合が多い。

 通常CAD/CAMは、レイアウト(構想)設計と構造設計という設計処理と、NCデータの編集&出力までの処理をカバーしている。

 この一連の作業に対して、金型メーカでは、複数台のパソコンを使ってLANを構築し、それぞれの業務を分業化する場合が多い。多くの場合、生成されるデータは共有できる情報としてサーバ内に置き、各業務に当たる作業者は、いつでもどこでもデータを自由に活用することができる環境を作っている。


3:CAD機能とその活用

 CADソフトウエアはレイアウト設計、構造設計、および図面出力の各処理体系と、自社独自に標準化構築できるデータベースを元に設計の進められる処理マクロで構成され、プレス金型設計製作に特化したフローを形成している。

 すなわち、標準的なCAD機能に加え、金型設計支援のためのブランク展開設計、曲げ加工工程設計、絞り工程設計、マッチングR自動作成など、各種のアプリケーションを装備している。

 順送金型では、材料の歩留り率の確認や、高歩留りを得るための設計が要求されるが、本システムでは、ブランクの送りピッチ変更や回転操作による材料幅の変動を見ながら、歩留り率の変化を表示させることができる。こうした金型設計に特化した特長的なCAD機能を、CAM機能とともに示すと次のようである。

CAD機能
 DXFファイルコンバート
 ブランク形状の展開
 曲げ加工工程設計
 スプリングバック計算
 円筒絞り工程設計
 歩留り率自動計算
 荷重中心自動計算
 切り欠マッチングR作成
 自動寸法出力
 曲げ展開計算
  (L/U/Z/カーリング/ハミング)
 円筒パイプ成形予備形状自動作成
 バーリング下穴径自動計算
 登録図形活用
 レイヤマルチスクリーン
 汎用ポストプロセッサ
 加工軌跡チェック
CAM機能(WEDM)
 コーナ処理
  (面取・R付・コーナ逃げ)
 スパイラル軌跡自動作成
 各種アプローチ編集
 多重加工編集
 上下異形状加工編集
 汎用ポストプロセッサ
 エラーレス巨大オフセット
 XYマルチプライヤ
 加工軌跡チェック
CAM機能(MC)
 穴径/線種/線色から加工工程編集
 複数枚プレ-ト同時加工データ編集
 ポケット島残し加工
 自動ツーリング処理


4:CAM機能とその活用

 WEDM加工に対しては、スパイラル(コアレス)加工、コーナ逃し、へそ取りなどの自動生成処理機能の他、元形状から複数回カット軌跡を自動作成する多重加工支援機能を有し、切残、切落、仕上げの各工程と加工条件が自動で作成され、正確で速くNCデータの編集出力が可能である。

 MC加工に対しては、CADで描かれた形状の穴径、線種、線色などの区分に応じた加工工程の一括入力が可能である。多種多様なMCに対処するため、汎用性の高いポストプロセッサを有し、工具、加工工程、MCデータなどのデータベースによる自動ツーリング処理機能、加工Know-Howの任意設定が可能なユーザマクロの登録と活用、複数毎プレートの最適な加工管理などにすぐれている。


お わ り に

 CAD/CAMシステムにおける今後のソフトウエア拡充の方針は、上位となる3次元データとのリンク機能の拡充、ネットワーク機能の拡充、金型設計Know-Howのマニュアル化のためのデータベース構築とその活用アルゴリズムの作成などを課題として、金型生産の将来システム形成のための多岐にわたる機能拡充にあたっている。


『製造業に向かう若い皆さん方に』

2003年5月2日
韓国/中部大学校セミナーにて
鰍xJS 代表取締役 吉田 三郎
 皆さん、こんにちは。私は、日本で「潟純Cジェーエス」という会社を経営しております吉田といいます。皆さんの大学は、韓国のちょうど真ん中にありますが、私達の会社も日本のちょうど真ん中にあります。韓国の真ん中は太田市ですが,日本のちょうど真ん中には愛知県というところがありまして、私達のいるところはその愛知県の中の犬山市という所です。

 今年の1月に、何人かの現場研修の学生さんに犬山市に来て頂きましたので多少情報があると思いますが、私たちの住んでいる犬山市は観光の街です。2つの国宝(犬山城と茶室)があります。その他に、夏の鵜飼や石あげ祭り、春の犬山まつり、ライン下り(渓流の川を、舟を漕いで下って行く)、このような観光が盛んで、1年を通じて観光客がたくさん訪れる、文化の豊かな街です。

 私達の会社YJSでは、CAD/CAMシステムの開発とインターネット関係の仕事をメインに行なっております。

 今年は、50年くらい前に日本で作られました、アニメーションマンガの「鉄腕アトム」の誕生した年ということになっております。鉄腕アトムは皆さんご存知ですか? 日本で今から50年前に作られたマンガです。50年前に、今年の2003年の4月7日が鉄腕アトムの誕生日という設定で、このマンガが作られました。2003年。50年前に比べて今では色々な科学技術が発展しまして、昔考えられていた鉄腕アトムのようなロボットが今にも活躍するような時代になったわけです。

 今日は、製造業を中心とした日本の産業に関する話題をお話をしようと思います。

 最近の日本の製造業を取り巻く話題には、大きく三つの特徴があります。

 1つは、日本の社会では、金融や政治が非常に不安定で、そのために消費が冷え込んで需要が減少し、生産手段が海外へ移転してしまっているという傾向があります。それから2点目は、これから社会に出ようとする、若い人達のもの作り、製造業に対する関心が薄くなっているという傾向にあります。それから、3点目は、ちょうど今が、世代交代の時期に来ているということです。経営者の世代が交代する時期で、若い人たちの理解や関心が薄いために、今まで構築されてきた技術・技能の蓄積の伝承・減少が危ぶまれております。

 日本の新聞記事によりますと、最近の日本の理工系の学生は、製造業への就職希望が減ってきて、サービス業に就職する傾向が強くなっています。新聞記事に掲載されている就職傾向に関するグラフによりますと、サービス業に就職する人の数は年々増えていますが、製造業に就職する人の数はどんどん減っております。日本の産業構造が変化していることを窺わせるデータでもあります。

 製造業を支えると言われる金型製作を例にとって産業の構成体系をみてみますと、そこには、産業を支える3つの柱、すなわち基盤があります。一つは、ハイテクの機械を駆使する「技術」です。それからもう一つはノウハウとか勘とかコツ、感性といった作業者のスキル「技能」です。それからもう一つはITを中心とした「情報」です。こうした技術と技能と情報が三位一体の基盤となって製造業が成り立っております。

 人件費の高騰や、大きな未開の市場を求めて、製造業が海外に出て行ってしまうことで、国内では製造業が空洞化されてしまうといわれておりますが、この生産の海外移転に関しては、現在中国がターゲットになっております。今まで中国はコストセンター的に考えられていて、安い労働力を求めて進出しておりましたが、最近は日系のメーカーが中国に進出して、生産だけでなく、中国という国を販売のターゲット、市場として進出しております。そこで産業の空洞化を防ぐために、日本の製造業は、高品質対応と環境問題への取り組み、低コストの追求、独創技術の開拓、新材料の活用など、新しい生産体制へシフトすべく変貌しています。IT社会はスピード社会と言われております。したがって、スピード感のある体質で、ネットワーク、情報を活用した生産体系への変貌、こうした取り組みを一生懸命行なっております。たとえば、製造業の現場、工場の中での設計部門と加工部門では、トータル的にネットワーク(LAN)を組まれて、データや資源の一元化による共有化を実現して、より合理化、効率化された稼動体制をしいております。

 あるデータによれば、日本の会社における情報化機器の保有率は、パソコンが81%、ファクシミリが89%、携帯電話が90%、デジカメが51%です。様々な情報交換のツールとして、情報化機器が最大限に利用されております。


 一般的に、会社の中ではQC(Quality Control)の基本的な考え方として、整理、整頓、清潔、清掃、躾、その頭文字のSをとった5S運動を実施しています。この5S運動の実施の徹底により、生産性や品質性を向上させるという、QC運動を行なっております。皆さんも、これから大学を卒業された後は、会社に入られると思いますが、従業員自らがこうした自覚を持って、企業に貢献する、ひいては産業を高度化させていくという心構えを持つことが必要だと思います。

 最近の韓国では、日本と同じように相当技術力が高くなっているようです。たとえば具体的にカラーテレビ・パソコン・エアコンといった製品は、すでに日本よりも品質は優秀であると評価されています。このように技術力が向上して、国際的な面では、これからの製造業における新しい生産技術の開拓や、商品開発力で多いにリーダシップを発揮していくことになると思います。

 製造業における技術の集積構造は、皆さんが今勉強されている基盤技術、基礎技術がベースとなって、更に応用されて実用的には特殊技術という形で体系づけられると思います。

 そして、最先端の産業界といわれます、IT・宇宙衛星・自動車・電気・原子力発電などの科学技術を生み出しております。ですから、みなさんも今の勉強されている基礎技術、基礎的な勉強を一生懸命されて、これから社会に出られて応用力・実用面での技術を磨かれて、多いに韓国の製造業界を引っ張っていくような人材になっていただきたいと思います。

 日本の10年前と今の若い人達の夢のベスト10の比較について新聞記事がありました。

 10年前は、公務員、プロスポーツ選手、医者、先生、会社員、パイロット、自営業、エンジニア、建築家、弁護士こういう職業が人気を占めていました。最近の人気職業のベスト1は公務員、2番目はスポーツ選手、3番目は医者です。そして、大工などの職人、会社員、エンジニア、先生、消防士、パイロット、大学の先生、こういう順番で新しいベスト10を構成しております。皆さん方の将来の夢とか、これからなりたい職業はどのような事でしょう。

 また、ある新聞記事では日本と韓国の若い人達がどういう気質を持っているかという比較がありました。日本に比べて韓国の人達は、非常に生活観に溢れた、色々な将来の明るい夢をたくさん持っている気がします。このような比較からも、韓国の若い人たちの描く職業観、人生観、未来像が伺え知れます。皆さんには多いに羽ばたいてもらって、韓国だけではなくて世界の製造業を盛り上げてもらいたいと思います。


 最近、韓国について一つだけ非常に関心のある、新聞の記事がありましたので紹介します。韓国では、昨年の暮れに大統領の選挙があって、新しく決まった大統領のふるさと慶尚南道のポンハ村が非常に有名になって、観光地化しているという話が日本の新聞記事にありました。皆さんは、もうそういった所にもう行かれたでしょうか。

 新しい観光地を巡ることがお好きだと思いますが、冒頭にも言いましたように犬山市は観光の街です。犬山市にあります私達の会社は、皆さんの大学と産学協力関係にあります。私たちの会社での現場実習など、勉強に来ていただく機会も何回かあると思います。そうした機会には時々時間を作って、地域の観光に、そして日本の文化の吸収に足を伸ばしてみてください。こうした交流の積み重ねが、日本と韓国の新しい関係を築いていくのではないでしょうか。そう思います。今日のお話はこれで終ります。どうもありがとうございました。

2003年 元旦  謹賀新年


 加速するモノづくり産業の空洞化に加え、低迷停滞する景気という逆境に漂う中でも、ノーベル賞のダブル受賞は唯一の明るい話題を提供してくれました。

 こうした柔軟な発想、模索、創意工夫と果敢な挑戦が現状打破の鍵かもしれません。

 新年は、不安を払拭して、モノづくり産業の新機軸構築のために希望の持てる年にしなければと念じています。

 培い養われてきた技能と技術の実力を再確認し、進化した技術の発想努力が必要です。

 私達はモノづくり産業の一端に携わる中で、夢とやりがいのある仕事を目指して、創造を喜びとする集団でありたいと願っています。

 金型設計製作に不可欠なツールであるCAD/CAMは、機能や性能を競うのではなく、コンテンツ、サービスの質が問われる時代です。

 今こそYJSらしさを発揮して、的確な道標提示、変貌に向けての新しい情報発信のできるIT活用ソリューションベース活動の発動の時でしょう。

 特に、YJSスタッフの個のスキルの発揮と、連鎖業務を連携するプロジェクト体制によるシンクタンク構想の拡充により、効果的イノベーションを生成するシステム提案、提供を目指してがんばってまいります。

 どうぞ本年もよろしくお願いいたします。


IT(情報通信技術)活用アラカルト

--- アメリカ、韓国、etc ---

吉 田 三 郎

 情報通信技術のめざましい進展について、一時はIT社会とかIT革命とか熱っぽく言われたときがありました。最近は少しさめてきたのか、あるいはその時代変化に慣れて、あたりまえに感じるようになったのか、騒がれなくなっている気がします。しかし、ビジネスの面でも生活の面でもパソコンやインターネットを盛んに利用するようになって、膨大な量の情報量と向き合っている、闘っている、そんな毎日でも在るようです。

 インターネットで手紙を送るという手段がありますが、小泉首相のメールマガジン“らいおんはーと”は毎週木曜日に送られてきます。6月27日のメールマガジンに「44%」という数字に関する記事が出ておりました。それは、日本のインターネット利用者数の比率です。調査時期がずれていたり、サンプリングの状況が違いますので一概に統計数が一致しませんが、インターネット普及率トップ40の国の資料によれば、日本は第25番です。日本は世界で25番目のインターネット利用国です。“らいおんはーと”には44%という数字が発表されておりました。
 現在日本では高度なIT社会の形成のために、高速で利用できる環境、ブロードバンドの普及に力を入れているということ。ケーブルテレビを利用したり光ファイバーを利用したりして高速でインターネットを使う常時接続時代がもうすぐやってくるという事などが書いてありました。
 先般の朝日新聞の総務省の発表記事でも、インターネットの接続料金は外国とあまり差がなくなって、日本も安い料金でインターネットを利用されているという記事が出ていました。このように今やインターネットと付き合わないではいられない社会、あたりまえにインターネットを利用する社会になっています。
 以前より金型メーカにおけるホームページの開設状況を調査しております。金型メーカのインターネットへの接続をIT活用のバロメータの1つと受け止めているのですが、1996年にはわずか32社しかホームページを開設していなかったのですが、その後毎年100件(社)づつ増えて、現在では約700社の金型メーカがホームページを作っています。そのくらい関心をもたれていますし,インターネットを積極的に利用されていると感じます。

情報洪水の真っ只中にビジネスも生活の場もあるのでしょうか、社会生活や地域や日常の生活の場において、いやでも情報洪水の中で生きている、という感覚ではないでしょうか。この情報を1つのキーワードにして話を進めていきましょう。

 1995年の2月に、ニュースキャスターの田丸美寿々さんの講演がありまして、そこで“情報”という言葉は森鴎外が命名したと話されました。
 そこで少し興味を持ちまして“情報”という言葉がどのように誕生したのか調べてみました。最近のある新聞のコラムでは福沢諭吉が翻訳して森鴎外が初めて使ったと書いてありました。たしかに「情報」という言葉を誰が始めて使ったかという説には“森鴎外造語説”というのがあるようです。森鴎外が書いた翻訳本“戦論”が明治34年に出版されていますが、そこには情報とは「敵国に対する我が知識の全体をいう」といっております。しかし、それ以前にも“敵情の報知”とか“敵情の報告”といった表現で、軍事的、謀略的に使われていました。ただし、その“情報”とは“りっしんべんに青”ではなく、“状況の状”で使われている場合もあるようです。明治9年にまでさかのぼることができて、その語源は兵隊言葉、軍事言葉として使われていたということが解っています。その後、戦後、情報理論が導入されて、information=情報と定義つけられました。情報という言葉についてはこのような歴史を持っております。
 一方、新聞のコラムに書いてありましたが、作家の五木寛之の“情報”のとらえ方は“情(こころ)を報じる”こころのありようを伝えることであるようです。  
 情報の情の字は友情とか情熱とか情緒という言葉に通じるという言い方をされていまして、最近のようにビジネス社会で殺伐とした状況で扱う情報とはちょっと意味が違うということを五木寛之が話していたと書いてありました。
 浜松に“常葉学園大学”がありまして、その松本光司氏は情報について方程式を立ててみえます。「現実+問題点の解決=理想」という式です。理想は現実に対して問題を解決することで得られます。つまり情報とは問題を解決する要素であるから、情報とは、現実を理想に導く要素である、という方程式を立てて見えました。情報過多な世の中で、いかに必要な情報を選択して、加工して、組み立ていくかということが、正しく情報を活用しているということでしょう。
 皆さんは情報についてどんなスタンスで考えらてみえるでしょうか。

 ITとはパソコンとネットワークを使って情報を扱う技術のことですが、情報が技術で扱われる、通信技術で扱われる、したがってこれをIT時代と言われています。
 ITつまり情報通信技術を扱うためには核になるものが3つあります。1つはパソコン(プラットホーム)です。2つ目はネットワーク (インターネット)です。3つ目はコンテンツ(ソフトウェア)です。この3つの核によってITが構成されていると言われております。
 パソコンとはパーソナルコンピュータを略して称する和製英語でしょうか。情報処理装置のことです。外国ではパソコンとは言いません。アメリカでは「PC(ピーシー)」、「マイコンピュータ」という言い方をしています。一度、アメリカ国内で「perso-comp」と書かれたパソコンの箱を見たことがありますが、現実にはアメリカではPC、マイコンピュータと言われています。
 パソコンは情報処理装置ではありますが、ネットワークに頻繁に使われるようになってきますと、情報伝達装置ではないかという気がしています。

 ところで、盛んにIT産業という言葉をよく聞きますが、IT産業に区分されるメーカを分析してみますと、3つに分かれます。1つはITのコア産業(パソコンやプリンター、デジカメを造るメーカ群)。もう1つはIT関連産業(光ケーブル、IC、液晶画面など部品を造る産業メーカ群)。もう1つはIT利用産業(インターネット接続、ホームページ作成、ショッピングモールの運営メーカ群)です。
 いわゆる、自動車産業では、自動車メーカがあり、ワイパーとか、ハンドルとか、タイヤをつくるメーカ、オーディオメーカなどというサプライヤーがあり、ガソリンスタンドがあり、タクシー、運送業者があって自動車産業が形成されているように、IT産業もコアを形成する産業から、関連産業、利用産業が産業のピラミッドを構成していると思います。
 ITコア、IT関連の産業が最近台湾で非常に活況で、made in Taiwan製の部品が随分多くなり、世界中のコンピュータのマザーボード(心臓部)やノートパソコンのほとんどといって良いくらいの量を生産しています。IT産業を台湾が引っ張っております。
 台湾には、最近できた大きな工業団地がたくさんあります。こうした工業の集積地である都市を作る場合、計画性が少し違うと感じました。単純に工場を誘致して工業団地を作るのではなく、計画的にまず学校を作り、ショッピングセンターを作り、アパート、住宅をたくさん作る。それから工場をたくさん作るという非常に計画的に設立された都市づくりをしているようです。これは単に生産機能だけではなく、生産を通じて科学の発展とか技術の蓄積をたくらんでいるという感じを持ちました。
 韓国のちょうど真ん中に太田(テジョン)という、かつて科学万博が開かれた都市があります。ここも科学都市形成を意識して、国の研究機関や大手企業の研究機関を一堂に集め、アメリカのシリコンバレーを思わせる思想で都市が計画的につくられているという感触を持ちました。

 アメリカの場合、良い悪いは別として情報の扱い方がスマートではないかと思います。
 1997年ですから5年前になります。ダラスの普通の家庭を訪れたことがあります。たまたまその翌日が休みだったのでダウンタウンに連れて行ってもらう計画でした。その家庭にはパソコンが1台あり、もう充分にインターネットを使い込んでいました。インターネットを使い翌日の予定を組んでくれました。明日はここへ行って、こういう買物をして、こういう観光地へ行ってと・・・。1日のスケジュールをインターネットの情報で組んでくれたのです。もうその頃からインターネットをあたりまえに(スマートに)使っていました。
 去年の9月11日、同時多発テロがありました。私は丁度その時、ロサンゼルスへ向かう飛行機の中に居ました。結局何があったのか解らなかったのですが、ロサンゼルスには行けなくて、急遽ハワイのホノルル空港に降ろされました。日本ではテロで崩壊されるニューヨークの状況を伝えるライブの情報がそのまま伝わっていたことに感心しました。アメリカという国の中にいても私達は逆に情報から取り残された状態でした。何が起こっているのか解らない。戒厳令が敷かれている状態で誰に聞いても教えてもらえない。つなぎつなぎしか解らない状況でした。かろうじてホテルに入ってテレビのスイッチを入れてやっと状況が解りました。情報から取り残された環境に陥ったのです。ところでハワイのホテルにはテレビにキーボードが付いていて、インターネットに繋げる事が出来ました。早速、フリーメールを使ってメールアドレスを取って,いろいろな所へ連絡をとりました。電話回線が混雑してなかなか繋がらなかったので、インターネットが利用できて、いろいろ助けられました。ハワイのホテルでは情報を使うインフラが充分に整備されていると感じました。
 アメリカでは、インターネットを使ってグローバルな情報交換をやっていこうという思想がありますが、グローバル化が災いしてテロが起きてしまいました。インターネットに対する考えが変わったかもしれません。最近FBIが人種差別やテロに関係のあるHPにアクセスした人をチェックするようになったそうです。テロ関係のHPに、誰がいつアクセスしたかの情報をつかんでテロリスト撲滅の仕事をしているという情報を聞きました。誰か行方不明者が出たとき、その人のパソコンを探って、どんなHPを見ていたかを探って、犯人探をしているそうです。
 ところで、普段の生活にもインターネット利用が盛んになって、今まで電話で収集していた情報をネットで収集する、パソコンで収集する傾向が強いようです。例えばオンラインバンキングと言いましてインターネットを使って銀行振込をやるそうです。アメリカでは電気料金とかガス料金などの自動引き落とし制度はあまり利用されていないそうです。労働者の給料は1週間に1回ごととか2週間に1回ごとの形で支給されますが、その日暮しの人が多いので、手元にお金のある時に払い込む事が多く、そういう習慣のためにオンラインバンキングが非常に盛んだという事です。
 ネットを利用したトラフィックスクール(自動車学校)の話題もあります。交通違反で免許を失った人が、免許を取り戻すために講習を受けなければならないわけですが、インターネットを使って授業を受けて反則点数を消滅させる。というようにトラフィックスクールにインターネットを使うということが盛んに行われているそうです。
 それから、税金の関係ですが、インターネットで納税を行っています。4月の中頃に処理されるそうですが、その時期はインターネット接続がしにくくなるという状況だそうです。今までは電話納税だったそうですがネットで所得税の納税をされるようになったようです。アメリカでは全人口の40%が経験しておりますし、アジアではシンガポールでも40%位の国民がネット納税をしている状況だそうです。
 ネットを使った買物なども盛んで、アメリカの男性はお店へ出かけての買物が苦手でインターネットで買物する頻度が高いそうです。買った品物は届けてはくれるのですが、場所やお店によって100ドル以上買物をしないと届けてくれないなど、色々なシステムがあるそうです。
 就職にもインターネットが活用されています。ネット上に自分の経歴、ポートフォリオを入れておくと、特技、経歴を必要とする企業から、就職案内が来るそうです。一般には会社サイドが求人募集を出して就職希望者が応募するという形体ですが、就職を探している人が会社を待つという形体が行われているようです。
 それから、若い人はゲームとか、映画、音楽、ソフトをダウンロードして利用しているようです。チケットの入手には今までは電話が主流でしたが、最近はインターネットを利用するという方法に変わってきています。
 アメリカは教育の国と言われております。サンフランシスコの南に、サンノゼという地域はシリコンバレーと呼ばれています。かなり前になりますが1935〜6年頃から計画的に作られたと思います。大学と地域・企業が共同してコミュニティを作ってきました。アメリカの大学は国立の大学がなくて、一番大きくても州立の大学だそうですけど,地域に対して貢献しなくてはいけないという法律があるのでしょう。大学で得た成果を、地域で反映させて、場合によっては商品化するというような事が盛んに行われているようです。シリコンバレーのスタンフォード大学ではベンチャー育成が盛んでハイテク企業を作り上げて行く事が活発に行われています。その地域はものすごいパワーを持っているし、スピードをもっています。ベンチャーが起きやすいのは、こういった大学があるだけではなく、お金を出してくれる人、資金を与えてくれる人もたくさん必要な訳で、そういった関連がうまく噛み合ってベンチャーの育成が出来、ハイテク企業の創出ができるわけです。それに対してシリコンアレーという、ニューヨークのマンハッタンのSOHOという地域があります。かつて倉庫があったり昔は芸術家がいたりしていた所です。そこはソフトウェアの開発拠点とでもいう地域です。シリコンバレーは半導体とかパソコンメーカといった企業が連立するところですが、マンハッタンはソフトウェアを作るメーカがたくさん集まっております。日本で言えばNHKのある渋谷の辺りの地域を指すのでしょう。ソフトウエア開発を中心とした若い企業家が集まってます。
 最近は、アメリカでもITの時代とは言われなくて、ITも使う道具ですから、バイオとか、ゲノム、ナノテクノロジーとか、新しいこれからの産業を引っ張っていく土台になるものが単なるITだという捕らえ方をしています。

 韓国はブロードバンド、ADSLとかケーブルテレビとかインターネットの常時接続の技術がものすごく発達しています。世界中で飛び抜けてインフラ整備が出来ています。一時はIMFの支援を受けた時がありましたが、この経済危機の時代に、アメリカはITで経済を引っ張ってきたので、そのアメリカを政策を見習って韓国でもIT社会構築の一環であるインフラ整備を国策としてすすめたのです。それこそ後先を見ないで進めたのですが、結果としてIT活用のためのインフラが整備できたのです。韓国でよく目立つのは高層マンションです。地上14〜5階のマンションがたくさん建っています。あのマンションはケーブルテレビの配線が非常にやりやすいので一気にインフラ整備が進んだと言われています。日本でもe-Japan構想と言うネットワークの活用計画がありましたが、韓国でもサイバーコリア21計画・e-コリア計画という計画を立ててIT社会を牽引するベンチャーの育成が盛んです。386世代といいまして30代で、1980年代に大学を卒業して、1960年代生まれの人が,盛んにソフトを作ったり、ハイテク関連の事業を起こしたりして新しい韓国を引っ張っているという捕らえ方をします。どちらかといえば日本は可能性を考えて事業計画を立てる慎重派でしょうが、韓国はいわば走ってから考えるタイプで、まずインフラを整備してきました。インターネットを使う環境は充分に整備出来たのですが、さてこれから何をやろうかと考えているタイプではないかと思います。
 韓国には、<パン産業>があります。<パン>とは部屋のことでノレパンとかビデオパンという産業が盛んですが、同じように<PCパン>があります。インタネットカフェなのですが、この部屋の中にはパソコンが10台から15台位配置されていて、インターネットを自由に使うことがでます。日本円で100円/時間位でパソコンを使ってインターネットを楽しむ訳です。ビジネスに使うのではなく、ほとんどは若い人達がゲームに使っているのです。日本のゲーム(ゲームボーイとかプレイステーションを使って)と違い、韓国はインターネットでネット上でゲームをする、対戦型を楽しんでいるようです。PCパンでゲームを一生懸命にやられ、若い人達が出入りをしてパン産業を形成しています。また新しいパン産業が出来ていまして、それは<DVDパン>です。今までは、ビデオパン(ビデオテープを見るパン)だったのですが、今度はDVDを楽しむ部屋のようです。そういった新しい産業が出来ています。
 それから、韓国の大都市ソウルでは、オートバイがネット産業を支えているともいわれています。それはデリバリの面で交通事情が非常に悪いですから、自動車で荷物を運ぶのではなく、オートバイで荷物を運んでいる光景をよく見ます。e-コマースで商品の流通が盛んになって、必然オートバイが増えることがネット社会のバロメータになっているようです。韓国のオートバイ事情から物の流通を測ることができて、韓国のIT事情が図ることが出来るということです。

 ある報告雑誌によれば、中国では1999年9月に面白い実験が行われました。上海と広州と北京の3つの都市で12人の学生が72時間インターネットだけでホテル生活ができるかどうかという実験をしたそうです。その結果、12人のうちの1人が脱落しただけで、全員が生活することができたというレポートがありました。これは中国ではITが実際の生活にどれだけ使えるか、という国の誇示かも知れません。中国もITの積極的な活用をしているというレポートではないかと思います。

 次に、シンガポールの話をします。
 アジアの中でシンガポールは非常にITの活用が積極的で、ビジネスだけでなく、一般の生活レベルにまでインターネットの活用が非常に盛んだと思っています。空港には、キーボードを外したパソコンが何台か並んだスクエアがありました。ここでインターネットを利用する場合は、お金を預かってキーボードを貸し出すというシステムのようでした。
 シンバポールの総人口は400万人位でしょうか。IT活用を国家的に形成するには一番いい大きさ、非常にやりやすい大きさかと思います。すでに確立された電子政府が運営されておりまして、ネット上で出生届から死亡届まで出来ると宣伝しているように、何もかもネット上で処理することが出ます。国民の5人に1人が使ったことがあるそうです。e-CITIZENという電子政府サイトが利用されているという報告があります。ビジネスの面でもかなり成果をあげています。シンガポールは、貿易の国ですので、貿易の申請の許可が、今まで2〜3日かかったのですが、インターネットを使って申請すればわずか20〜30分で許可が下りるそうです。そんなソフトを開発して、つまりそれは政府主導のソフトのようですが、この例のように官公庁が率先して業務の効率化・合理化をしなければならないことはいくらでもあると思います。日本の場合は、官公庁、それぞれの市町村がお互い意地を張っているのか、無駄な事をやっているように思えるのです。例えば、HP一つ作るにしても、それぞれの市町村がばらばらな形体で作っています。これでは互換性がないばかりか、発展的ではないと思います。申請業務にしても、あるいは許認可業務の受付けにしても市町村によってぜんぜん方向性が違っていて実にもったいないやり方をしています。これを全国レベルで共通で出来るページとか、フォームを作ったりして計画的に出来ると効率的に安く出来るのではないか思います。そういった事が日本はなかなか進められていないのではないかと思います。それは、国の規模が大きいからかもしれません。シンガポールのように人口400万人強なら出来るのかもしれません。日本の場合はかなり非効率的で非合理的だなと感じました。

 最後に、1つだけ少し違う面から情報を提供しておきたいのですが、ここで4つの問題を掲示したいと。思います。
 先日あるテレビ番組の中でも、「1時間で燃え尽きる蚊取り線香が3個と、マッチ棒がたくさんある状況で1時間45分を計りなさい。」という課題の提供がありました。それと同じようなことですが、こうしたIT社会、ネット社会、パソコンと向き合わなければならない社会、インターネットと付き合って行かなければいけない社会で、生活スタイルも大きく変化しているのでしょうが、ストレスを持たないでやって行くにはこういった問題にふれて、楽しみながらその答えを考えてみると、頭が柔らかくなるということです。実際、ソフトハウス、ソフトメーカにおける入社試験でもこうした問題を使っています。
 図1は「マッチ棒を並べて作った正方形が三つありますが、ここでマッチ棒を1本だけ動かして、長方形を3個作りなさい。」という問題です。
 図2は、「直線ばかりでいくつかの三角形が出来ていることがわかりますが、大小合わせて直角三角形が全部でいくつありますか。」という問題です。
 図3は計算式がありまして、「数字を書き込む四角が9つあります。この四角の中に1から9の数字を1回ずつ使ってこの式を成り立たせなさい。」という問題です。
 図4は、「四角の中に1から9の数字を1回ずつ使って書き込んで縦・横・斜め、どこを計算してもその合計が15になるように埋めなさい。」という問題です。
 こういう問題を紹介しまして、この話題の紹介を終わろうと思います。じっくり考えてみてください。

ネット社会を考える

吉 田 三 郎

 1970年代に誕生したパソコンは、今ではビジネス社会に無くてはならない必需品です。そもそもパソコンは、計算、検索、制御、CG、人工知能、ネットワークという機能を持っており、ビジネス業務の効率化を図り、自動化に貢献するツールです。高度な作業を簡単にかつ短時間で行えるようにしてくれたばかりか、インターネットを普及させてネット社会を出現させました。すなわちパソコンとインターネットによるハイスピードな技術革新により、情報がリアルタイムに流れる環境を作り出しました。最近では、携帯電話を利用したモバイルインターネットも普及しています。そして、ネットワークにつなげばありとあらゆる情報が手に入るわけです。パソコンとインターネットの急速な普及により、ビジネス社会を大きく変えたばかりか、地域や家庭生活の場にも多くの情報やサービスをもたらしてきました。ワープロやゲーム、インターネトなど趣味や娯楽、生活に活用されています。インターネットで情報を収集したり、メールのやり取りやネットショッピングにも利用されていることでしょう。インターネットが普段のライフスタイルに変化をもたらしました。

 世界中に張り巡らされたインターネットによって、情報は瞬く間に世界中を流れ、国境を感じさせないグローバル化が進んでいます。

 ビジネスの世界では、新しい産業体系が形成され、無限なビジネスチャンスを作り出しています。創造力とスピード感と野望、熱意に満ちた若いベンチャー企業が誕生している世紀です。

 こうした潮流は、必然的に政治や経済、社会、地域、生活に直結することとなり、私達はネットワーク、ネット社会というキーワードをどういうスタンスで捉えていけばいいか、考えなければならない時代です。

 ビジネスでは、ITを導入したからといっても、運用サイドに問題があれば効果を出すことは出来ません。このことは、ビジネス社会に限らず、広く社会全般についても同じでしょう。文化を持った私達は、人間性を失うことなく、人間社会を育みながら、現実としてのネット社会に生きていかなければなりません。直面する少子化やシルバー社会の到来、環境問題対策、地域の活性化などに、パソコンやインターネットをどう活用していけばいいのか、21世紀文明の正しい在り方、正しい方向付けを探る、その正念場に立たされています。

ともに伸びる

YJS:吉田三郎

  「CADなど金型向けソフトは新たな特徴をどう出すかが課題。従来と同じでは生き残れない」と語るのは、CAD/CAM開発のワイジェーエス(愛知県犬山市)社長の吉田三郎さん。

 CADなども低価格傾向にある。「ただでさえ国内に金型メーカーは厳しい環境にあり、当社が売り上げを伸ばすには、新たな価値を付加するしかない」と生き残り作を練る。

 「当社が販売したソフトは延べ約1000セット。顧客の役に立つ新たなソフトの開発を進め、ともに伸びていければ」とする。成長の設計図を描こうとしている。

                                                          2002/5/1 日刊工業新聞「ふんすい塔

          『IT基盤の金型産業の現況と展望』
 
                         潟純Cジェーエス 代表取締役 吉田 三郎

1. は じ め に

金型産業は、自動車、家電を中心とした大規模市場に対し系列を形成して栄え、高度成長を支えてきた。しかし、1990年代からのグローバリゼーションにより、昨今は製造業自体の大変革を余儀なくされている。生産拠点の海外流出により、競争力を維持するためのコストダウン要求が一段と強まってきた。国際競争にさらされる中、系列が崩れ始め、金型メーカ同士の価格競争も激化しているのが現状である。

とはいえ、こうした厳しい環境下においても、高品質の確保、短納期対応のため、新技術の導入とさらなるコスト削減の努力により競争力を維持している。そして、製造業における金型の重要性を認識し、IT技術を積極的に活用した設計製作体系の再構築を進めている。

図1は金型メーカにおける機械統計と工業統計による2種類の生産額の推移を示したものである。工業統計とは従業員が4人以上の企業の統計であり、機械統計とは従業員が20人以上の企業の統計である。これによれば、現在の金型生産額は、工業統計では1兆9000億円ほどであり、一方機械統計では約4500億円である。

生産額は1991年がピークであったが、その後バブルがはじけて経済が悪化し、生産額が落ちてきた。金型産業にとって厳しい環境下に置かれている。

この二つの統計から、従業員数の少ない金型メーカの生産額が非常に高いウェイトを占めるということ、つまり金型産業は零細な金型メーカで成り立っていることが判断できる。


2. 金型メーカの課題

さて、金型メーカは具体的に次の三つの項目に課題をもっていると考えられる。

一番目は消費の冷え込みにより、なかなか商品が売れない時代を迎え、海外への生産シフトなどの要因もあって、製造業自体の活気が落ち込んでいるという課題に直面していることである。

二番目は1960年頃に企業を設立し、製造業を支えてきた経営者が年をとられて、「世代交代」の時期を迎えているという課題がある。若い人達に経営をバトンタッチしなければならない時期を迎えている。

三番目に技能の伝承に関する課題がある。金型は、高精度なNCマシンの活用と熟練技能が結集して生み出されている。かつて独立創業された金型職人は、個性に富み、仕事に情熱を持ち、希望や夢を持たれていた。そういう人達の情熱を若い人たちが引き継いで熟練技能を伝承していくことが大事である。しかしそれが危ぶまれている。

金型産業がメジャーでないという点は、商品が作られる過程を考えてみると納得できる。

商品が市場に出回るまでの一般的な過程は図2に示すように、企画、設計工程を経て、必要な構成部品が製造され、組立られるという流れを形成している。一方、金型は製品の構成部品を成形する道具、工具にすぎない。いわば影に隠れて間接的に部品生産に携わるという工程にある。金型産業は製造業の基幹とはいうものの表舞台には出てこない。しかし、部品の生産と供給にはどうしても金型が必要で、重要な技術には違いない。


3. 金型メーカの対応

そこで金型メーカの取るべきこれからの姿勢について、幾つかの項目を考えてみる。

一つは熟練した技能者が高齢化してきたので、技能を継承できる人材の育成が必要である。熟練技能をCAD/CAMや高機能なNCマシンの活用技術に置き換えるためのマニュアル化やデータベースの構築が必要である。

そして非常に利益率が低い産業と化しているので、コストを正確に管理した経営体質への改善が必要である。金型産業がメジャーでないという点に対しては、広報産業館を利用するなどして、金型産業を認知してもらいメジャー化する工夫も必要であろう。

また、金型産業を形成する零細な企業では、欠ける営業力を強化していくことも必要である。

IT・インターネットの積極的な活用により、情報技術を高度に利用した設計製作工程の構築も必要になってくる。特に低コスト化とともに、多品種少量生産指向で、新製品の開発期間が短くなっているので、生産サイクルに追従できるスピード化対応も不可欠である。IT化社会はまさにスピード時代といわれるが、金型の設計製作に関しても、まずスピード対応出来なければならない。ITの導入や活用、CAD/CAMとNCマシンを駆使できる濃密なハイテク化による高品位、高効率な設計製作対応の形成が要求される。

設計段階での成形シミュレーション、機能チェック、図面レスでの加工対応、モデル成形ラピッドプロトタイピングの活用などもその一旦である。

インターネットを活用して国境を越えたグローバルな金型製作が行なわれている。独創的なアイデアを創造するために、異業種間での協同作業ということも必要になってきている。

これらの体制を考えれば、金型産業は情報武装による新たな生産システムの形成に向けた変革期を迎えているといえる。特に生産拠点の海外流出に加え、海外からの技術の追い上げがあり、需要は減少してきてはいるが製造業を支える非常に重要な位置付けにあると考える。

最近の金型メーカは、それぞれの企業が持つ独自な技術を金型に反映して非常に特徴ある、差別化した金型製作の追求に特化している。例えば、寸法的に超高精度な微細部品の成形金型生産とか、他社では製作が困難な部品成形金型の設計や製作技術をもちあわせていないと生き残れないという状況にある。

こうした企業スキルは、金型製作のための技能、Know-How、勘とかコツとか感性という職人の技能(いわゆる匠の世界)と、CAD/CAMとなどのハイテクな装置を高度に利用し、ハイテクな機械を駆使できる技能との融合(スーパー匠の世界といわれる)を形成して、高度で特殊な金型を作り上げているという段階へ到達している。

得意技を生かした、特に「超」の付く金型、「超精密」「超複雑」「超大型」に特化した分野での金型メーカの存在が製造業を支えている。そのベースにあるのが人材であり、CAD/CAMシステムであり、ハイテクなNCマシンであり、ITの活用であろう。

その他の課題も幾つか存在する。今、品質が高くて環境対策のある商品が必要とされている。例えば重いモノは軽く、四角いモノは丸く、金属とプラスチックが分別しやすい製品が求められている。そして安全性が重視されている。人にやさしいといった環境対策をとる必要もある。

技術的には新材料の成形技術の確立や、加工法を工夫した新しい技術も生れている。プレスと鍛造と併用する金型技術も一般化してきた。新しい商品を開発したり、新しい加工法を作り上げていくという独創技術の開拓に取り組んでいる。


4. ネットワークの構築体系

金型の発注企業の製造プロセスでは、CAD/CAMによる3次元ソリッド生成データがベースになっており、このデータを直接金型メーカに転送して金型の製作依頼が行なわれる。かつては設計された製品やその構成部品の図面を供給し、それに基づいて金型製作の依頼があったわけであるが、最近はCADデータの保存メディアを直接提供して業務を依頼している。

金型メーカは、まずこうした金型の発注企業の製造プロセスと一体化する必要がある。特にソリッドのCAD/CAMで三次元データを提供するため、金型メーカはこの三次元データを受け取れる能力が要求される。このプロセスの一体化によって設計時間を短縮し、設計のミスを防止し、トライの回数を減らして、スピード対応が可能となる。

このように金型メーカでは、グローバルでスピーデイな対応の展開できるネットワークの構築とともに、設計段階から情報化体制をとる段階に到達している。

パソコン(PC)の性能が大幅にアップしたことで、金型メーカではPCベースのCAD/CAM活用が一般的である。低価格なシステムは、ますます金型製作に必要不可欠なツールとなり、図面を描くと言う言葉が死語となる時代が近い将来到来するであろう。

金型メーカにおけるネットワークの構築事例を図3に紹介する。

 通常、PCシステムを用いた金型の設計業務の全容は、構想(レイアウト)設計と構造(プレート、穴配置)設計により、いわゆる金型の全様設計(CAD)が行なわれる。この設計業務に加え、NCデータの編集作業(CAM)がプラスされる。構造設計は分業することもあるが、構想設計の分業は現実的には困難であろう。この活用例では、複数台のシステムをCADとCAMのそれぞれの業務に分業して活用し、一連の業務の効率化と納期短縮効果を引き出している。

金型製作工程を10とすれば、設計が3、機械加工が4(データ作成が1〜1.5、その他は加工時間)、組立が2、調整が1という工程区分である。CAMシステムの利用時間は、CADシステムの利用時間より短いため、MCとWCへの共用対応が可能である。

CADとCAMの業務の分業化において、重要なポイントは共有データの管理体制である。CAD/CAM活用の最大の利点は生成データを共有しての全体業務の効率化である。 

この例では、CAD/CAMで生成されたデータはDATAServerで一括管理し、いつ、誰が、どこででも自由に活用できる環境を提供している。
 CAD/CAM生成データ以外に、加工設定データベースも全てこのDATAServerに置き、PCとNCマシンをもリンクしたネットワークの構築で、共有データを効率良く活用した業務体系につながっている。


5 金型メーカのIT活用

さて、金型メーカの具体的なIT活用について考察する。

図4は金型メーカのHPの開設状況である。検索エンジン「Yahoo!」によれば、1996年の10月、わずか32社のHPの開設が確認されているが、その後開設数は右肩上がりに増大し、最近では約600社が開設している。

受発注関係でのインターネット利用では、e-メールで図面データを渡したり、問い合わせや、見積り、納期の確認連絡などが日常的に行なわれている。

金型メーカの開設するHPの構成内容を見ると、会社案内、営業案内、設備紹介、求人案内が掲載されている。最近は、企業の技術力のPRが前面に出て、成形製品の写真掲載などにより、企業の独自な技術力のアッピールが目に付く。小さな金型メーカが単独でHPを開設するだけでは非効率であり、ポータルなサイトを利用してHPのリンクを張ったり、幾つかの金型メーカが共同でHPを開設してバーチャルな工業団地を形成し、企業の集合体による総合的な技術サポート力のPRで、仕事の受発注の窓口にするという活用の手法もある。こうしたポータルなサイトが個々の金型メーカをサポートして、情報交換の場を提供している。広く業界を超えて関係企業や地域に存在する企業が集まって、仕事を共同で受けたり情報を交換したりするネットワークが構築されている。

一方、金型を製作するNCマシンのメーカサイドでもIT化への取り組みが活発である。

マシンを制御するコンピュータをインターネットに接続して、離れた所からの機械の監視・操作・オフライン技術サポートなどができる機能を組み込んでいる。

金型メーカは一般に、自動車なら自動車、電気なら電気と対象部品を特化して金型づくりを行っているが、そうした垣根を取り払い、他の金型メーカで製作された様々な種類の金型でも修理、改造に応じるという業務を開始した企業も出現した。これまでは他メーカで作られた金型に手をつけることはいわばタブーでもあったが、その手段にe-メールやFAX、ITを活用してそれを打ち破る新しいアイデアを打ち出している。

金型メーカIT活用に関するグローバルな視点での動向も見受けられる。金型(やその構成部品)も今や世界中で調達されている。スピード時代といわれる昨今、金型の部品調達やメンテナンスにも迅速な対応が必要であり、世界中の色々な拠点との大きなネットワークを張った情報交換は不可欠である。そして、ネットワークに対応した規格の統一化に向けた取組みも必要である。


6  お わ り に

このように金型メーカでは、ITを社内的に、或いはネットワークの中でさまざまな形態で活用している事例が見受けられる。

今までは、設計に関してはコンピュータを使ったCADを、加工に関してはNCマシンを駆使するという処理業務のハイテク化が行われてきたが、これからはそうしたシステム、マシンの活用がグローバルなネットワークの中で展開されていくと思う。

産業内外で情報交換がますます必要になっていく中、インフラの整備はどんどん進んでいくが、金型の設計製作を指導してきた技能者が高齢化しているということもあり一線から遠ざかりつつある。これからは若い人達に、金型に限らず広く<モノづくり>に関して興味を持ってもらい、新しい形での製造業の構築に携わってリードしていっていただきたいと考えている。